大切なカバンのための交換用ハンドル
思い入れのある物は、誰にでもあるもの。
大切な人にいただいたものや、それを持っていたおかげでプロジェクトが成功した、あるいはずっと欲しくて貯金をしてやっとの思いで買ったものなど。
私の思い入れのある物の1つとしては、前職ではスイミングインストラクターだったのですが、私のクラスの2歳の女の子がプールに入る前に、いつも私のために作ってきたと折り紙を折ってプレゼントしてくれたのが何とも可愛くて忘れられません。三角に折り紙を折ったもので「何を作ってくれたの?」と聞くと、満面の笑みで「さんかく!」と教えてくれました。毎週さんかくをもらっていたのですがそのさんかく、今も机の中にあります。これを見るといつも元気もらえます!
話は変わって、前に私の友人が年期の入ったカバンを持っていました。牛革のいいカバンですが、持ち手ハンドルが擦り切れていて見栄えが少し悪いんです。
「カバン買い換えないの?」と聞くと、「この鞄はね、大切な鞄なんだ。尊敬している上司にプロジェクトの成功祝いに買ってもらった鞄なんだよ。」とのこと。
なるほどなー、それはそのまま使いたいよな。
「メーカーに修理してもらえば?」と言うと、「そうなんだけど、自分で買ってないからいまいちどこに言えばいいか分からなくて。」と友人。
友人との話はそれで終わったのですが、確かに持ち手ハンドルはカバンで一番酷使される部分で、常に手で持って歩くたびに前後左右に振られるわけです。カバン本体は大丈夫なのに、ハンドルだけ先に痛むのは良くあることで、かといって修理頼むのも時間かかるし・・・と思ってる方もいるだろうなと思いました。
自分で交換できるハンドルがあれば、喜んでくれる人がいるかも!そう思い革工房に相談したのですが、ハンドルは先ほど書きましたが一番酷使されるので、トラブルが多くハンドルだけの制作は難しいとのお返事でした。
でも、それで諦めたくない!別の革工場さんに相談し、なんとかサンプルを作ってもらったのですが、
ボタンの強度面も心配だし、ボタンを外した時のハンドルの芯材が見えて気になる。
革自体のグレードも上げたいし、全体的に安っぽい。。。う~ん、まだまだ改良が必要です(汗)
ボタンももっとカバンと違和感のないように変えたいと思いましたが、ボタンに変わるもので交換できるハンドル・・・となるとなかなか難しく、職人さんも忙しいので月日がどんどん過ぎてしまいました。
それでまた別の革工房に相談すると、交換ハンドルに「おもしろい!」と共感してもらえ、ボタンではなくマイナスドライバーでネジで締めるようにすれば、違和感なく強度面も問題ないんじゃないかとのことで、サンプル作りに入りました。革のグレードも上げ、ハンドルの芯材が見えないようにとをお願いして。。。
それがこちら!
おお!芯材が見えないよう革を2重にし、ネジで締められるようになっている!
これが言葉ですと1行で済んでしまうのですが、革を2枚合わせ、しかも革の端が見えないようにそれぞれ折り返して縫製するので、革4枚分を縫い込むことになります。しかも芯材を入れるので平面ではない部分です。これには経験を積んだ職人の技術が必要です。また、革を薄く漉かないとハンドルが分厚くなってしまうので、革の強度を保ちつつ、ハンドルとして成り立つ薄さにしないといけません。革漉きも、薄くするには技術がないと革が破れてしまうのです。
サンプルは出来ましたが、元のカバンのハンドルを付けている部分の金具は、幅が様々である程度対応出来るよう、金具内寸(交換ハンドルを取り付ける幅)を20mmでお願いしたのですが、片方は20mm、もう片方は21mmとずれていたので、これの改善をお願いして再サンプルを作ってもらいました。
そしてついに完成したのがこちら!
革工房に初めて相談してから、実に1年かかりました。
以下が本生産の様子です。
型で革を抜きます
先端部分の革2枚を縫い合わせ
手で持つ部分の革の端を巻き込み
その端部分(巻き込んでるので革4枚分の厚み)を縫い合わせ
完成したハンドルを当店の売れ筋AV-E072ビジネスバッグに取り付けたものが
↓こちら
取り付け方などは商品ページにてご紹介しておりますので、ご覧いただければ幸いです。商品ページは下記店舗名をクリックされますとご覧いただけます。
皆様の大切な鞄を、永く持ち続けてもらえますように!
カバンショップasoboze 大西